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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)262号 判決 1967年7月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由一について。

所論は、原審において上告人古沢は、第一審における請求を拡張し、被上告人に対し、さらに金二五万円の支払を求めたのに、原判決は、第一審判決に対する控訴を棄却する裁判をしたのみで、あらたに支払を求めた右金二五万円についての裁判を脱漏したと主張するものと解される。

しかし、裁判に脱漏がある場合には、原裁判所に期日指定の申立をし追加裁判を求めるべきものであつて、かような事実をもつて上告の理由とすることはできないのみならず、記録によるも、所論控訴状添付の目録が原審の口頭弁論期日に陳述され、その他上告人らが原審において、所定の方式に従いその請求を拡張し審判の対象とした事跡は見当らない。したがつて、上告人らの控訴申立のみについて裁判をした原審の措置は相当であつて、その間に所論の違法はない。論旨は採用できない。

同二ないし四について。

所論は、原判決の違憲をいうが、その実質は単なる法令違背を主張するものにすぎない。そして、原判決の引用する第一審判決が確定した事実関係のもとにおいては、上告人の主張にかかる賃借権の設定は、北海道旧土人保護法二条二項の規定による制限を潜脱する脱法行為として無効であつて、自作農創設特別措置法二二条の補償の対象とならないとする原判決の判断は正当であり、当裁判所も、これを是認する。したがつて、これと異なる見解に立ち右賃借権の設定が有効になされたことを前提とする所論は、すべて採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 柏原語六 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)

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